産業としての観光、そして観光文化

ミュージアムクォーター(MQ)


ウィーンの路は広い。大抵、路が広いと行政は駐車区域を作ったりして、車が沢山駐車してしまい、見苦しく感じられてしまったりするものだが、そういうこともない。


街には気持ち良さそうに自転車に乗る地元の人に混じって、各所に乗り捨て場のあるレンタル自転車(色が目立つのですぐわかる)に乗ってうろうろしている旅行者も見受けられる。


ツアリストインフォメーションで貰った無料地図は、トラム・地下鉄・バスの路線図が細かく載っており、そんなに大きな地図でもないのに、正確に街路の名前まで記入されている。この地図を見ながらウィーンの街を移動しても殆ど迷うことがなかった。


ミュージアムクォーター(MQ)と呼ばれる、美術館の密集した地区の広場には恐らくアーティストがデザインしたと思われる、多目的なベンチ(写真にある赤いヤツ)には若い子が本を読んだり昼寝をしている。近くのカフェでは美術館の後、一休みしている旅行者が目に入る。ここには、近年オルトナー&オルトナー設計で建築された美術館が3つあり、すぐその近くに自然史博物館や美術史博物館がマリア・テレジアの像を挟むように配置してある。ここで美術館を梯子していれば、一日は確実に過ごせる。特にオルトナーの美術館の内部空間は非常に洗練され、ファザードの素材の制御にも長けた建築だと思う。ああ、もう一度行きたい。あっこでもう一度昼寝したい・・。


そして、『世紀末ウィーン』として名高いゼセッションの建築や美術品が街ではいくつも発見できる。昔ゼセッションについて齧ったときは、ああ「金色キャベツかあ」とか写真を眺めるだけで終わっていたが、実際にゼセッション(クリムトの壁画がある方)を見に行くと、クリムトによるディテールが大変美しい。建物内の地下にある壁画も素晴らしい。オットー・ワーグナーの郵便局も今なお美しく感じられる時間の淘汰に負けない建築であった。


その近くにはデリやエスニックの食材や多国籍なレストランが軒を連ねるナッシュマルクトのすぐ近くにはクリムトの壁画を仰ぎ見ることの出来るセセッシオン。


観光=そこで他者がお金を落としていく事と言える現代のツアリズムで、街を整備し景観を整えていくことは集客効果にも繋がり、更には観光が産業となる場合には、すなわち第三次産業の隆盛を指すのであり、逐次的に投資を重ねることで街は(観光客にとって、となるかもしれないが)よい方向へと変貌していくのではないか。ウィーンはロンドンやパリほど大きな都市ではないが、整備され続けた結果、それが既存の文化から新しい文化を育む土壌となっているのではないかと思った。大抵、観光地って大衆化されてて(例えば京都の清水寺界隈の八橋売場)なにか大事なものが損なわれている気がして落ち着けないのだが、なんかウィーンはすごくいい街だった。


追記としては、ホイリゲ(一年目のワインを飲ませるお店)に知人に奨められたので行ってみたらワインは美味いわ、料理は美味いわで、とてもよかった。2回も行ってしまった!