表象としてのスポーツ

実際に著者と二晩連続で杯を交わしたこともあり、彼が経験した瞬間瞬間の時間を想像しながら読めた。東欧の社会主義に翻弄されたディナモという名を冠した諸国のフットボールクラブに関するエッセイ的な本。作者いはく『ディナモ』はダイナミズムから派生して、もともとは「動き」からついた名前らしい。「発電機」ともとれるらしいが、なぜか発電機と聞いてジョージ・オーウェルの『動物農場』を読んだときに描いた光景が蘇った。

作者のサッカー愛が伝わってくる濃密な下調べに基づく、ロマンチシズム溢れる文章だった。思い入れが伝わってきて、果たしてこの主観を歴史学者はどういう判断をするのか、というのが気になったが、現代の商業主義に大いに利用されているスポーツに、一石を投じようとしている名著だと思った。